おれのせいじゃないよな

彼はそう思っていた。仕事がうまくいかないのも、彼女が出ていったのも、おまけに猫まで帰ってこないのも。おれのせいじゃない。彼は代わりになり得る理由を昨日から必死で探していた。おれがAB型だからだろうか、木星人でしかも蟹座だからか、それとも今年は忙しくて初詣に行かなかったからか。どれもこれもあてはまるような気がするし、そうでないような気もする。

おれのせいじゃない

おれは原因さえはっきりしていれば、あとは自分で解決できる男なのだ。これまでだってそうだったじゃないか、車の仕入れでトラブったときだって結局しっかり相手のせいにしてやったさ。あれこそおれの実力発揮ってもんだ、そうだろ。要はきっかけなのだ。要はおれが今こうして最低のところを這いずり回る羽目になっている忌々しい原因さえ掴むことができたら。たったそれだけのことなんだ

おれのせいじゃないんだ

彼は視界に鬱陶しくちらついていたテーブルの脚を一度小さく蹴飛ばしてみたが、それははじめからぐらぐら不安定で彼の悩みを解決させるきっかけとなるにはいささか役不足だった。何がいけないんだ、おれのせいじゃない。それは確かだ、おれのせいじゃないんだ。だとしたらいったいどいつがいけないんだ。

やっぱりおれのせいなのか

いや、ちがうよな。ちがうよな。おれのせいじゃないよな。